「バズってる記事を見かけるたびに胸がざわつく」そんな夜が続いていた時期がありました。
タイムラインの向こうで誰かの花火が上がるたびに、自分の画面の黒さが際立って見えるんですよね。
わかってるのに比べちゃう。
ああいう瞬間的な光じゃなくて、僕は手元のランタンみたいにずっと灯り続ける記事が欲しかったんだと、やっと自分に正直に言えたのはずいぶん後になってからでした。
あのころの僕は「速さ」ばかりを追いかけていて「深さ」を置き去りにしていたんです。
深さは時間を食うし、すぐには数字にならないし、自分の未熟さが露出して恥ずかしいからつい避けたくなるんですよね。
でも避け続けた結果、残るのは軽い息切れと薄い達成感だけでした。
ここからお話しするのは、そんな僕が地味さを味方にしながら記事を“育てる”側に回っていった、ちょっと泥くさいメモワールです。
もし今あなたが同じところで立ち止まっているなら、肩を並べて一緒に歩けたらうれしいです。
「良い記事」はうまさじゃなくて“居場所”だった
うまい文章を書くほど読まれる気がしていたんですよ。
比喩をひねったり、導入をきらびやかにしたり、気合いの入った見出しを並べたり。
でも、ある日コメント欄で静かに言われました。
「この通りにやったら当日うまくいきました。
ありがとう」その一文に、僕は少し泣きそうになったんです。
美しさでも技巧でもなくて、読者が迷子にならずに自分の足で次の一歩を踏み出せたこと。
それが“良い記事”のコアなんだと骨の髄からわかった瞬間でした。
検索には言葉の影に気持ちがくっついていて、そこに手を伸ばせたとき、記事は急に温度を持ちはじめます。
知識を差し出すだけじゃ足りないんですよね。
何に迷っていて、どこで足が止まっていて、どの順番で不安を外したら前に進めるのか。
読者の世界の地図の上に、自分の灯りをそっと置く感じです。
その灯りは強くなくていいんです。
まぶしすぎる光は目を痛くするから。
必要なのは、安心して顔を上げられるくらいの明るさなんですよ。
公開はゴールじゃなくて「呼吸の最初の一吸い」
昔の僕は公開ボタンを押すたびに全部を出し切っていました。
長距離走の一歩目で全力ダッシュをしてしまうようなやり方で、息が続くわけがないんですよね。
あるとき考え方を変えました。
公開は最初の一吸いで、そこから記事が空気を吸って吐いてを繰り返しながら形を整えていくんだと。
導入の約束をもう少し読者の言葉に寄せてみようとか、離脱が多い段落の前に一言
「ここからは当日の詰まりやすいポイントを三つに絞って話すね」
そう添えてみようとか、内部リンクのつけ方を「なぜその記事につなぐのか」の理由と一緒に手直ししようとか。
どれも一回では世界は変わらないけれど、呼吸みたいに積み重なると、記事がちゃんと体温を持ちはじめるんです。
面白いのは、その体温は画面の向こう側にも伝わるということです。
滞在時間が少し伸びて、スクロールの止まり方がやわらかくなって、検索から戻る人がちょっと減って。
あの微妙な変化は、数字以上に自分の心をあたためてくれました。
“地味記事”が看板記事になるまでの道のりは長いけど味わい深い
あまり人に見せたくない初期原稿が一本あります。
最初は一日10PV。
タイトルはりりしくて中身は空回りという、昔の僕を象徴するような記事でした。
ある日の夜、僕はその記事のいちばん最初の三行をまっさらにして、自分の弱さを少しだけさらす言葉に置き換えました。
「初めての出店で時間が足りないあなたへ。これを読めば前日の夜に慌てなくて済むように書いたよ」。
言葉にうそがなくなると不思議と文章が落ち着きました。
次に、つまずきやすい段落の手前で読者に声をかけました。
「ここからは十分で準備できるところだけ先に並べるね。細かい理由は後でいいよ」。
その一声でスッと読み進む人が増えたのをアナリティクスが教えてくれました。
最後に、記事の末尾にA4一枚の小さなチェックリストを添えました。
見栄えは素朴でも、当日の手汗を拭ける紙です。
半年後、その記事は月一万五千PVを連れてくる柱になりました。
誰も歓声を上げなかったし、トレンドにもならなかったけれど、静かで確かな足音を立てて育ちました。
僕はあの子を心の中で「行灯」と呼んでいます。
薄暗い廊下でつまずきそうな誰かが、足元を照らすためにだけそこにいる灯りです。
比べる心がうずく夜に効く“言語化”という救命具
正直に言うと、今でも他人の成果に心が揺れる夜があります。
人間だもの、ありますよね。
そんなとき僕はスマホを伏せて、何に不快を感じているのかを言葉にします。
焦りなのか、置いていかれる怖さなのか、自分が作ってきたものへの不信なのか。
名前がつくと不快は少しだけ手懐けられるんですよ。
小雪さんが言っていた「安心感」と「言語化」の話が骨にしみていて、あれ以来僕のメンタルの“応急処置”はこの順番になりました。
まず体に呼吸を思い出させること、次に心に名前をつけること、最後に手を動かして一センチだけでも前に進むこと。
タイトルの先頭七文字を直すとか、導入の最後に「ここまで読めば何ができるようになるか」を一行で書き切るとか、そのくらい小さくていいんですよ。
動けた自分をその日のうちに褒めて寝ると、翌朝の自分が思ったより優しく迎えてくれます。
結局、記事を育てるときにいちばん必要なのは自分を見捨てない態度なんだと今は思うようになりました。
読者の“世界の順番”に記事を合わせると離脱は目に見えて減る
検索する人の頭の中って順番があるんですよね。
何から知りたいか、どこで不安がピークになるか、何を最後に背中を押してほしいか。
その順番に合わせて見出しを並べると、文章が勝手に前へ進んでくれます。
僕の場合はまず現場の時間軸で並べます。
準備、当日の導線、詰まりやすい箇所、片づけ、よくある想定外。
途中で寄り道はしないで、必要なら最後に深掘りを別の記事として置いておきます。
ここで大事なのは、内部リンクに“理由”を添えることなんですよ。
「原価を下げたいならこっちの記事の具体例が役に立つよ」とか「時間がない人はこの段取りだけで回るよ」とか。
リンクは橋だけど、橋がどこへつながっているかの看板がないと読者は渡らないんですよね。
この“理由の一言”を覚えてから、僕の内部リンクは血流みたいに温かくなりました。
E-E-A-Tを背伸びせずに記事に溶かし込む
難しく考える必要はないよね。
「経験は恥ずかしい失敗談を一つでいいから誠実に差し出すこと」
「専門性は公式情報を読者の言葉で一行要約すること」
「権威性は同じ用語を記事群で一貫して使うこと」
「信頼性は更新日と更新理由を正直に書いておくこと」
例えば「去年はこの方法を推していたけれど、今年は機材側の仕様変更があって手順を入れ替えたよ」と素直に書けば、検索エンジンにだけではなく読者にも伝わります。
嘘のない温度が積もると、サイト全体の空気が澄んでくるのが自分でもわかるんですよ。
“コツコツ”を続けるための家内制手工業的メンタルマネジメント
僕は大仰な目標を掲げるよりも、家内制手工業みたいに小さな工程を毎日回す方がうまくいくタイプでした。
朝、昨日の自分にメモで礼を言うところから始めます。
「導入の約束を直すこと」「兄弟記事と双方向リンクにすること」「最後に今日やることを三行で書くこと」。
作業机に座る前に、声に出して約束を復唱すると不思議と体がついてくるんですよ。
作業が終わったら必ず「次の自分への置き手紙」を残します。
具体的にどの段落のどの文から手を入れるかを書いておくと、翌日の助走が楽になりますよね。
こうやって自分の未来の負担を少しずつ軽くしてあげると、継続のハードルが一段下がって、コツコツが日常の歯磨きみたいに当たり前になっていきます。
“地味さ”を笑われない場所を自分でつくる
派手さが正義みたいな空気の中で、地味さを選ぶのは勇気がいります。
だからこそ、笑われない場所を自分でつくるのが大事なんですよ。
僕にとってはそれが“島”でした。
ごちゃまぜブログの中に小さなテーマ群を作って、その島の中だけで言葉をそろえ、体験を重ね、リンクで手をつなぐ。
島の中では速度より生活感が強くて、評価は遅いけれど安定して上がります。
ときどき他の島へも橋を伸ばしますが、そのときも「なぜこの橋が必要か」を丁寧に説明します。
これを続けたら、サイト全体が急に“呼吸”を始めた感じがしたんです。
画面の向こうの読者の足音が近づいたり遠のいたりするのが、ほんの少し聞こえるようになりました。
読者の肩に羽織ってほしい一枚の“安心”
たぶん、みんな安心が欲しいんですよね。
情報が欲しいんじゃなくて、情報を持った自分で大丈夫だと思える感じ。
僕は記事の最後に必ず「今日やるならここからでいいよ」という小さな出発点を置きます。
玄関の上がり框にスリッパが一足用意されているみたいなものです。
そこまで連れていけたら、読者はもう大丈夫。
あとは自分のリズムで歩いていけるから。
記事はその背中に手を添えて「いってらっしゃい」と小さく言えばいい。
僕が好きなのは、そんな静かな伴走です。
まとめ
バズはたしかに眩しいですよね。
打ち上がる瞬間の高揚も、夜空を染める色も、人を惹きつける魔法を持っていると思います。
でも花火が消えた後に広がる暗さに、僕は何度も心細くなりました。
その度に画面の明るさを上げても落ち着かなくて、やっと気づいたのは、僕が欲しかったのは自分の手元にある小さな灯りだったということでした。
コツコツは地味で時間がかかるし、時々ひどく退屈です。
でも、いちど灯った行灯は簡単には消えないんですよ。
あなたが今日直した一文、つないだ一つのリンク、重ねた一つの実例。
それらは見えないところで根になって、やがてあなたのサイトを静かに支えます。
比べなくていいよ。
焦らなくていいよ。
腐らなくていいよ。
あなたの記事は今もちゃんと育っています。
そしてその灯りは、どこかの誰かの足元をたしかに照らしています。
大袈裟じゃなく、それだけで十分尊いことだと僕は思うんです。
ここまで読んでくれてありがとう。
今夜はスマホの光を少し落として、あなたの手元の灯りをしっかり見つめてあげてください。
明日また一緒に、一センチ先へ進もうね。
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